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福岡地方裁判所 昭和48年(ワ)1282号 判決

原告

松隈輝敏

ほか二名

被告

古賀隆利

ほか一名

主文

1  被告らは各自、原告松隈輝敏に対し金二一万八五二四円および内金一九万八五二四円については昭和四九年一月一日から、内金二万円については昭和五〇年一一月二九日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告松隅聿子に対し金三万八九九六円および内金三万三九九六円については昭和四九年一月一一日から、内金五〇〇〇円については昭和五〇年一一月二九日から支払済まで年五分の割合による金員を各支払え。

被告古賀博幸は原告株式会社九美堂に対し金八万七四六四円および内金七万七四六四円については昭和四九年一月一一日から、内金一万円については昭和五〇年一一月二九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告らの被告古賀博幸に対するその余の請求および原告株式会社九美堂の被告古賀隆利に対する請求を、いずれも棄却する。

3  訴訟費用中、原告株式会社九美堂と被告古賀隆利との間に生じた分は同原告の負担とし、その余はこれを二分し、原告ら、被告ら共にその一あての負担とする。

4  この判決は1項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、原告輝敏に対し金七四万五三一〇円、原告聿子に対し金一二万九九九〇円、原告会社に対し金二三万一六六〇円、および右各金員に対して昭和四九年一月一日から、それぞれ支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

3  1項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

3  被告ら敗訴の場合、仮執行免脱の宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (事故の発生)

被告博幸は昭和四七年八月二九日午後七時一五分頃、被告隆利所有の普通貨物自動車(福岡四四そ五二―一三。以下被告車という)を運転して、被告隆利の業務に従事中、福岡県小郡市松崎町松崎交差点において、前方注視を怠り、同交差点手前より急速に右折したため、同交差点を直進する原告輝敏運転の原告会社所有にかかる普通貨物自動車(福岡四四せ八八二五。以下原告車という)に被告車を衝突させ、原告車を損壊し、原告輝敏に対し入院加療四七日間、通院加療六四日間(うち通院実日数六日間)を要する頸椎捻挫、前胸部打撲の傷害を負わせ、原告車に同乗していた原告聿子に対し通院加療三〇日間を要する頸部捻挫、両膝関節打撲の傷害を負わせたものである。

2  (被告博幸の過失)

被告博幸は本件事故当時一七才であつたが、被告車を運転するに必要な普通自動車の運転免許を有せず、無免許で被告車を運転していたのであるが、本件松崎交差点に差しかかつた際、折から青信号で直進してきた原告輝敏運転の原告車の通過を待つて右折すべきであるにもかかわらず(道交法三七条違反)それに反し、又右折の際には徐行しなければならないのに(道交法三四条)それに反して、交差点直前より急に右折した過失により本件事故を惹起したものである。

3  (被告らの責任)

(一) 被告博幸は本件事故の加害者であるから原告ら全員に対し不法行為に基づく損害賠償義務がある。

(二)(イ) 被告隆利は被告車の所有者であつて、右自動車を自己のため運行の用に供していたものであるから、自賠法三条に基づき原告輝敏、同聿子に対して右損害を賠償する責任がある。

(ロ) 被告隆利は鮮魚商であり、その営業に被告博幸を使用していたのであつて、本件事故もその営業の用務中に発生したものであるから、使用者として原告会社が蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

(ハ) 仮りに右使用者責任が認められないとしても、被告隆利は被告博幸の父であり、同人が無免許で被告車を運転することを認容していたのであつて、無免許で自動車を運転すれば事故が発生することは当然予見できたのであるから、その点で不法行為における過失責任は免れるべくもなく、原告会社に対し損害賠償義務を負担するものである。

(ニ) 仮りに被告隆利が被告博幸の無免許運転を積極的に認容していなかつたとしても、一七才という自動車に興味をもつ年令の子をもちながら、被告車の管理を蔑ろにし無免許運転を許した点、不法行為における過失責任を免れることはできない。

4  (損害)

(一) 原告輝敏の損害 合計金七四万五三一〇円

(イ) 慰謝料 金三九万五〇〇〇円

原告輝敏は本件事故により傷害を受け、昭和四七年八月三〇日から同年一〇月一五日まで入院し、同月一六日から同年一二月一八日まで通院した。入院中は一ケ月金一五万円の割合により、通院中は一ケ月七万五〇〇〇円の割合によるのが妥当である。

(ロ) 入院費用 金三七三〇円

(ハ) 入院雑費 金一万四一〇〇円

入院日数四七日間で入院雑費一日当り三〇〇円の割合。

(ニ) 逸失利益 金二二万八四八〇円

原告輝敏は前記傷害のため原告会社を欠勤せざるを得ず、九月分、一〇月分の給与各金八万一〇〇〇円、一一月分給与のうち金六四八〇円の支払を受け得ず、又昭和四七年下半期賞与が金六万円低下した。

(ホ) 弁護士費用 金一〇万四〇〇〇円

原告輝敏は本件訴訟の提起を原告ら訴訟代理人に委任したが、その際、着手金として金四万円を支払い、又本訴請求認容額の一割(金六万四〇〇〇円)を成功報酬として支払うことを約した。

(二) 原告聿子の損害 合計金一二万九九九〇円

(イ) 慰謝料 金七万五〇〇〇円

原告聿子は本件事故により傷害を受け、昭和四七年九月一日より同月三〇日まで通院して治療を受けた。右通院中は一カ月金七万五〇〇〇円と評価するのが妥当である。

(ロ) 治療費 金四九九〇円

(ハ) 逸失利益 金三万円

原告聿子は前記傷害により一ケ月間の通院治療を受けたが、その間の逸失利益は一般家事労働の平均賃金に基づいて金三万円が相当である。

(ニ) 弁護士費用 金二万円

原告聿子は原告ら訴訟代理人に本訴請求を依頼し、本訴請求認容額の二割を報酬として支払うことを約した。

(三) 原告会社の損害 合計金二三万一六六〇円

(イ) 車の修理費 金一三万五八六〇円

原告会社は本件事故によりその所有する原告車を損傷され、福岡トヨペツト株式会社に修理費として金一三万五八六〇円を支払つた。

(ロ) 車の評価損 金五万七八〇〇円

本件事故により原告車は修理をしても車両の価値は減少し、その評価減少額は金五万七八〇〇円である。

(ハ) 弁護士費用 金三万八〇〇〇円

原告会社は原告ら訴訟代理人に本訴請求を依頼し、本訴請求認容額の二割を報酬として支払うことを約した。

5  よつて、原告輝敏は被告らに対し各自金七四万五三一〇円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和四九年一月一一日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告聿子は被告らに対し各自金一二万九九九〇円およびこれに対する前同日から支払ずみまで同割合による遅延損害金の、原告会社は被告らに対し各自金二三万一六六〇円およびこれに対する前同日から支払済まで同割合による遅延損害金の各支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1項の事実のうち、原告主張の日時、場所において、被告博幸の運転する被告車と原告輝敏の原告車(原告会社所有の点については不知)が衝突したこと、原告車が損傷したこと、原告両名が負傷したことは認めるが、右事故の態様に関する部分は否認する。原告両名の傷害の部位、程度、入通院期間は不知。

2  同2項の事実のうち、被告博幸が本件事故当時一七才であつたこと、無免許運転であつたことは認めるが、本件事故発生が、同被告の過失によるものであるとの点は否認する。

本件事故は松崎交差点の信号機が赤色の信号を示しているのに、原告輝敏がその直前で停止せず、時速約五〇キロメートルで同交差点に進入した過失に基因するものである。

3(一)  同3項(一)の事実は否認する。

(二)(イ)  同項(二)の(イ)の事実のうち、被告車が被告隆利の所有であることは認めるが、その余の事実は否認する。

被告博幸が同隆利不知の間に合鍵を使用して入庫中の本件車両を無断運転しているものである。

(ロ) 同項(二)の(ロ)の事実のうち、被告隆利が鮮魚商を営んでいたことは認めるが、その余の事実は否認する。

被告博幸は当時福岡県三井郡大刀洗町下高橋、古賀清美の経営する建築関係の防水工事に従事していたもので、被告隆利の鮮魚商に使用されていた事実はない。

(ハ) 同項(二)の(ハ)の事実のうち、被告隆利が被告博幸の父であることは認めるが、その余の事実は否認する。

被告博幸は当時バイクの運転免許を取得したい意向であつたが、被告隆利はその実弟が交通事故死しているので、それすら禁止していたものである。

(ニ) 同項(二)の(ニ)の事実は否認する。

4  同4項の原告らの損害額は全て争う。

5  同5項は争う。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因1、2項の事実は、原告車の所有関係、本件事故の態様、原告両名の傷害の部位、程度、および入通院期間ならびに被告博幸の過失の点を除いて、当事者間に争いがない。

二  そして、〔証拠略〕を総合すると、本件事故の状況は次のように認められる。

1  本件事故現場は福岡県小郡市松崎七三九の二番地先の県道上で、かつ大刀洗方面から小郡方面に向け東西に通ずる歩車道の区別のない幅員一一・四メートルの右県道と、北野方面から夜須方面に向け南北に通ずる歩車道の区別のない幅員七・九メートルの道路とが、ほぼ直角に交差する交差点上でありそれぞれの出入口には横断歩道と信号機が設置されている。本件事故は昭和四七年八月二九日午後七時一五分ごろ発生したのであるが、まだ明るく、見通しもよかつた。

2  被告博幸は、当時運転免許を有しなかつたが、被告車を運転して、前記県道を小郡方面から東進し、同交差点で右折して北野方面に向け進行するために、時速約四〇キロメートルで前記交差点手前約三〇メートルにさしかかつたところ、進行方向の信号は青色だつたので、右折の合図をしながらそのままの速度で進行し、小郡方面の横断歩道の手前で一応減速し、横断歩道上にきたとき進行方向の信号が黄色に変つたがすでに交差点に入つていたので、そのまま交差点の中心付近まで進行して右に四五度の角度で停車した。そのころ、大刀洗方面の横断歩道から約二〇メートル先付近に、原告車が対向して接近してくるのに気付いたが、原告車は右横断歩道手前の停止線で止まるものと思い、被告博幸において右折を始めたところ、交差点内に進入してきた原告車と被告車とが衝突した。

3  原告輝敏は、原告会社所有の原告車に、妻の原告聿子とその妹鳥居スマ子を同乗させて、右原告車を運転し、前記県道を大刀洗方面から小郡方面に向け時速約五〇キロメートルで進行していた。前記交差点の大刀洗方面の横断歩道から約二〇メートル手前の場所で進行方向の信号機は黄色であつたが、そのままのスピードなら右信号機が赤色になる前に同交差点を通過できると思い、格別減速もせず進行を継続したところ右横断歩道上まで進んだときに、交差点中心付近にいた被告車が右折を始めたので、あわてて急ブレーキを踏んだが及ばず、被告車と衝突した。

4  本件事故により、原告車は右フエンダー、右ボンネツト等を損傷し、原告輝敏は入院加療四七日間、通院加療六四日間(うち通院実日数六日間)を要する頸椎捻挫、前胸部打撲の傷害を受け、原告聿子は通院加療三〇日間を要する頸部捻挫、両膝関節打撲の傷害を受けた。

以上の事実が認められ、右認定に反する〔証拠略〕はにわかに信用できず、他にこの認定を左右するに足る証拠はない。

三  右認定の事実によれば、被告博幸は、本件交差点において右折を始めようとするころ、すでに前方三〇メートル位の地点に原告車が時速五〇キロメートルの速度で進行してくるのを認めたのであるから、その動静に十分の注意を払い、安全を確認して右折すべきであるのに、原告車が大刀洗方面の横断歩道手前の停止線で停車してくれるものと速断して、右折を開始したもので、その点被告博幸の過失は免れないところである。

しかし一方、原告輝敏においても、大刀洗方面の横断歩道手前二〇メートル付近にきたとき、進行方向の信号機がすでに黄色となつており、しかも右交差点内に入つた被告車が右折することも考えられたのであるから、右横断歩道手前の停止線で一旦停車するとともに、対向車の動静を注視すべきであつたのに被告車は当然直進するものと速断し、しかも右信号が赤色に変わる前に同交差点を通過できるものと軽信して、減速もせずに時速五〇キロメートルで進行したため、右横断歩道上においてはじめて被告車が右折しようとするのに気付き、急ブレーキをかけたが間に合わなかつたもので、その点原告輝敏自身の過失も重大である。

そして以上認定の諸事実からすれば、本件事故における双方の過失の割合は、被告博幸の四に対し原告輝敏の六とするのが相当である。

四  しかして、〔証拠略〕によれば、原告輝敏は原告会社の従業員であり、当時その承認を得て原告車を運転していたことが窺われ、又原告聿子が原告輝敏の妻であること前示のとおりであるから、原告輝敏自身についてはもとより、原告聿子および原告会社の関係においても、右輝敏の過失を被害者側の過失として、その賠償額の算定にあたり斟酌することとする。

五  被告らの責任

(一)  被告博幸に過失のあること前示のとおりであるから、同被告は民法七〇九条により本件事故に基づく損害を賠償する責任がある。

(二)(イ)  被告隆利が被告車の所有者であり、又被告隆利と被告博幸とが親子の関係にあることは当事者間に争いがない。そして、被告博幸、同隆利各本人尋問の結果によれば、被告隆利は同人の実弟が交通事故で死亡したこともあつて、被告博幸にはかねて自動車の運転を厳しく注意していたことが窺われるが、一方では、被告車の管理が杜撰で、被告博幸においてしばしば被告車の予備キー等を持ち出し、これを運転していた事実が認められ、本件の場合も、被告博幸が父隆利の不在中、友人のところに遊びに行くため、タンスから勝手にキーを持ち出し被告車を運転していた際の事故であることが認められる。以上の事実によれば、本件被告博幸の被告車運転の行為は、客観的外形的には被告隆利のためにする運行と認められ、又その運行支配も失われていないというべきであるから、被告隆利は、自賠法三条のいわゆる運行供用者に該り、同条により、本件事故に基く損害の賠償責任を原告輝敏、同聿子に対して負わねばならない。

(ロ)  次に、被告隆利の被告会社に対する責任原因について考えてみるに、原告会社はまず被告隆利の使用者責任を主張しているが、その点十分な証拠がなく、却つて〔証拠略〕によれば、被告博幸は事故当時、被告隆利の実弟古賀清美の経営する古賀防水工業に勤務しており、被告隆利方の従業員でなかつたことが認められる。もつとも、〔証拠略〕によれば、被告博幸は警察の取調べや家庭裁判所の審判の際、職業として父の経営する鮮魚店の手伝をしている旨述べたことが窺われるが、前示証拠と対比するとき、被告博幸が動転して誤り述べたとも考えられるので、未だこれだけでは原告会社の主張を肯認することはできない。

更に、原告会社は被告隆利が被告博幸の無免許運転を認容していたとして、又積極的に認容していなかつたとしても、一七才という自動車に興味を持つ年頃の子を持つ親として、自動車の管理を蔑ろにしていた点に過失責任があると主張しているが、被告隆利において被告博幸が無免許で被告車を運転することを認容していたと認めるに足る証拠はなく、又未成年ではあつても一七才ともなれば、すでに十分の判断能力を備えているのであるから、平素、自動車のキーを差し込んだまま車を放置して、被告博幸を無免許運転の誘惑に駆り立てるといつた特に杜撰な管理状況でもあれば格別、すでに認定した程度の無断運転の事実等から被告隆利に対し、被告博幸の無免許運転を予測し、かつその結果交通事故を惹起するであろうことまで予見して、その防止措置をとるべき義務を要求することはいささか酷といわねばならず、したがつてこの点原告会社の主張はいずれも採用できない。

六  損害

(一)  原告輝敏の損害

(イ)  慰謝料 金二五万円

原告輝敏の前記受傷の程度および入、通院期間等を考慮すると、その慰謝料としては金二五万円が相当である。

(ロ)  入院費用 金三七三〇円

〔証拠略〕によれば、原告輝敏は友田病院に対する入院費用として金三七三〇円を支払つていることが認められる。

(ハ)  入院雑費 金一万四一〇〇円

原告が前記入院期間一日平均三〇〇円程度の雑費を要したであろうことは十分推認できるので、その主張どおり四七日分計金一万四一〇〇円を認容する。

(ニ)  逸失利益 金二二万八四八〇円

〔証拠略〕によれば、原告輝敏は前記受傷のため昭和四七年八月三〇日から同年一一月二日まで原告会社の欠勤を余儀なくされ、九月分、一〇月分の給与各金八万一〇〇〇円、一一月分給与金六四八〇円の支払を受けることができず、また昭和四七年下半期賞与も金六万円低下し、合計金二二万八四八〇円の損害を受けたことが認められる。

(ホ)  過失相殺

以上(イ)ないし(ニ)の損害額を合算すると合計金四九万六三一〇円となるところ、被害者側にも過失のあること前示のとおりであり、これを斟酌すると被告らをして負担せしむべき損害額はそのうち金一九万八五二四円となる。

(ヘ)  弁護士費用 金二万円

原告輝敏の弁護士費用として請求しうる損害額は、前記認容額に照らすと、その一割にあたる金二万円をもつて相当とする。

(二)  原告聿子の損害

(イ)  慰謝料 金五万円

原告聿子の前記受傷程度および通院期間等を考慮するとその慰謝料としては金五万円が相当である。

(ロ)  治療費 金四九九〇円

〔証拠略〕によれば、原告聿子は友田病院に治療費として金四九九〇円を支払つたことが認められる。

(ハ)  逸失利益 金三万円

前に認定した通り、原告聿子は前記傷害により一ケ月間の通院治療を受けたが、その間の逸失利益は、一般家事労働とみても、賃金センサスから窺われる女子労働者の平均賃金に照らすと、まず同原告主張の金三万円は、相当といわねばならない。

(ニ)  過失相殺

以上(イ)ないし(ハ)の損害額を合算すると合計金八万四九九〇円となるところ、前同様過失相殺すると、被告らをして負担せしむべき損害額はそのうち金三万三九九六円となる。

(ホ)  弁護士費用 金五〇〇〇円

原告聿子の弁護士費用として請求しうる損害額は、前記認容額等を考慮すると、金五〇〇〇円と算定するのが相当である。

(三)  原告会社の損害

(イ)  車の修理費 金一三万五八六〇円

〔証拠略〕によれば、原告会社は、本件事故によりその所有する原告車を損傷され、福岡トヨペツト株式会社に修理を依頼したところ、その費用として金一三万五八六〇円を要した事実が認められる。

(ロ)  車の評価損 金五万七八〇〇円

又、〔証拠略〕によれば原告車は四七年式トヨタのライトバンであるが本件事故による損傷のため、たとえ修理しても車両の価値の減少は免れず、その評価減少額は日本自動車査定協会により金五万七八〇〇円と査定されていることが認められるので、一応同額の損害があつたものと認容する。

(ハ)  過失相殺

以上(イ)(ロ)の損害額を合算すると合計金一九万三六六〇円となるところ、同じく過失相殺すると、被告博幸をして負担せしむべき損害額はそのうち金七万七四六四円となる。

(ニ)  弁護士費用 金一万円

原告会社の弁護士費用として請求しうる損害は、前記認容額等を考慮すると、金一万円と算定するのを相当とする。

七  とすれば、被告らは各自、原告輝敏に対し合計金二一万八五二四円、原告聿子に対し合計金三万八九九六円を、又は被告博幸は原告会社に対し合計金八万七四六四円を、それぞれ右金員のうち弁護士費用を除く各金額に対しては記録上訴状送達の翌日であることが明らかな昭和四九年一月一一日から、右弁護士費用について本判決言渡の翌日である昭和五〇年一一月二九日から、いずれも民法所定年五分の割合による遅延損害金を付して支払う義務があるというべきである。よつて、原告らの本訴請求を右の限度で認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとし、民訴法八九条、九二条、九三条、一九六条を各適用し、なお仮執行免脱の宣言については本件は相当でないと認めるので、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 権藤義臣)

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